- 2006年6月20日 00:39
- book
藤原新也氏の最新刊「渋谷」を読んだ。
彼の著書は書店で見かければ買ってしまうので、内容もあまり確認せず出だしは何気なく読んでいましたが、半ばからはぐいぐい引き込まれ一晩で完読、そして夜が開け明るくなってきた朝の光が奇跡的に美しく見えるような読後感でした。
内容的には軽く読める類いの本ではないのかもしれませんが、写真という行為を通しての、“見る事”、“撮る事”、そして”撮られる事”の意味を深く深く考えさせられました。この本では「写真のまなざし」とはセラピーとして機能しており、その行為と対局に位置する行為としてネグレイト(無視)されることがあり、それは現代社会では様々にかたちを変え存在し色々な問題を生んでいると。
藤原氏もこの著書の中で「まなざしとはかくも強く人の心に関与するものなのだ」と語っていますが本当にその事を痛感させられ、まずコミュニケーションの第一歩としての見る事(=理解する事)の重要さ、そこから自分の中で一度考え次に言葉を発したり撮影したりする、アクションを起こすという行為が当たり前のようでいて実はすごく繊細で難しい行為なのだと再認識させられました。
話は全然変わりますが昔デッサンを勉強していた頃、「良い作品を作りたいのならまずよく見る事からはじめなさい、それからなぜそう見えるのか(存在するのか)自分の中で納得いくまで考え、それから手を動かしなさい」とよく言われていた事を思い出しました。その時の作業の割合は、見る事、考える事が10に対し、手を動かす事は1でいいと…。今でも物を制作する行為、そして全てのコミュニケーションという行為はそのくらいで良いのではないかと考えています。
とにかく、こんな回りくどく書いてしまいましたが、ぜひお勧めです。そしてもし読んでみて感じる事があれば過去の著書もぜひ。
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